桐生タイムスへ寄稿 R1.5.16

群馬県桐生市の税理士 内田です。

桐生市の地元新聞 桐生タイムスの「税務Q&A」へ寄稿しました。
内容は、相続税の基礎控除、配偶者の税額軽減についてです。

桐生タイムス 税務相談Q&A 令和元年5月分

Q.
わたしは桐生市内のサラリーマンです。

昨年父が亡くなり、遺産分割を兄姉としました。
母はすでに他界しており、相続人はわたしと、わたしの兄と姉の3人です。

父が残した遺産は自宅と預貯金で合わせて7千万円位ありましたが、
わたしは実家から出ており、兄が家業を継いだこともあり、
ほとんどの遺産を兄が引き継ぎ、
わたしと姉は預金を500万円ずつもらうということで、全員納得しました。

遺産分割に異存はないのですが、
わたしがもらった500万円から相続税を払う必要がある、と兄から伝えられました。
相続税の基礎控除は3千万円に加え、
相続人それぞれが600万円使える、とインターネットで調べていました。
わたしがもらったのは500万円で、基礎控除より少ないのに、相続税を支払う必要があるのでしょうか?

(わたしの妻の実家の父の相続時には、妻の母親が1億円程度の財産を相続したのに相続税を払わなかったとも聞いているので、尚不可解です。)

A.
ご質問ありがとうございます。
質問を、質問者様ご自身の相続と、
奥様の実家の相続とに分けてご回答いたします。

まず質問者様の今回の相続ですが、相続人が3名であればおっしゃる通り、

相続税の基礎控除は3千万円+600万円×3人(相続人の数)

で、合計4,800万円となります。

しかし、この基礎控除は、
財産をもらった相続人各々で計算するのではなく、相続財産全体で計算します。

すなわち、今回の相続財産全体の7千万円から、
基礎控除4,800万円を差引き、
残った2,200万円に対しての相続税を計算します。

そのうえで、算出した相続税を、
各相続人がもらった相続財産の金額であん分計算します。

そのため、相続財産全体で計算をしてみて相続税が出ていれば、
財産を貰う人は全員相続税を支払うこととなりますし、
逆に相続財産全体で計算をして相続税が出なければ、
財産をどれだけ余計にもらっても相続税はかかりません。

また、奥様のご実家の相続の際は、
奥様のお父様が亡くなられて、
奥様のお母様が1億円程度の財産を相続したのに相続税を支払っていない、
ということですね。

その他の詳細が不明のため正確には分かりませんが、
恐らく、相続税の『配偶者の税額軽減』を適用したため
相続税がかからなかったものと推測されます。

相続税の『配偶者の税額軽減』とは、
相続発生時に、その配偶者が財産を引き継ぐ場合は、
1億6千万円までは税金がかからない、という制度です。

一定の要件はありますが、
この制度を適用できれば相当額の財産を
無税で配偶者が相続することが可能となります。

相続税制は非常に複雑でわかりにくいため、
ご不明な点は最寄りの税理士又は税務署等へ
相談されることをおすすめいたします。

(桐生税理士会 税務研究部会 内田伸)