「電子取引請求書のデータ保存」(桐生タイムス「税務相談Q&A」へ寄稿 R5.5.18)

群馬県桐生市の税理士 内田です。

桐生市の地元新聞 桐生タイムスの「税務相談Q&A」へ寄稿しました。
電子帳簿保存法のうち、「電子取引データ保存」のご質問に対する回答です。


桐生タイムス 税務相談Q&A 令和5年5月分


わたしは桐生市内で美容院を営んでいます。

取引先からメールでもらった請求書は、
印刷して紙でファイルして保管しています。

しかし、来年の1月からは紙ではなく
電子データで保存する必要があるとききました。

これは、メールをそのままとっておけばいいのでしょうか?

A.ご質問ありがとうございます。

ご質問いただいたのは、
「電子帳簿保存法」の改正のうちの
「電子取引データ保存」についてですね。

これまでは、メールやPDF、ブラウザ上で取得した
請求書、領収書等(以下「電子取引データ」といいます。)は、
紙で印刷して保管していれば、
税務上問題ありませんでした。

しかし、
令和6年1月からは一定のルールに従って、
電子的に保存をしなくてはいけないように
法律が改正されました。

すべての事業者が対象となります。

(この改正は、
令和4年1月から実施されるはずでしたが、
民間の準備不足等を鑑み2年間延期されて、
令和6年1月からの実施予定となっています。)

「電子取引データ」を保管する場所は、
自社のパソコン、サーバー、クラウドストレージなど、
どの媒体でも大丈夫です。

保管する際の要件としては、
システムの準備など様々な取り決めがありますが、
中小企業については、
国税庁が以下の簡便な方法をすすめています。

1.請求書データ(PDF)のファイル名に、「日付」、「取引先名」、「金額」を付し、規則性をもって内容を表示する。
  例) 2024年10月31日に株式会社国税商事から受領した110,000円の請求書
     ⇒「20241031_㈱国税商事_110,000」というファイル名に変更する

2.「取引の相手先」や「各月」など任意のフォルダに格納して保存する。

3.所定の事務処理規定を作成し備え付ける。
  (事務処理規定は国税庁HPよりひな形がダウンロードできます。)

■国税庁 電子帳簿保存法関係参考資料(各種規程等のサンプル)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021006-031.htm

上記の簡便なやり方でも、
まだ中小企業への負担は大きいため、
令和5年度の税制改正で以下の見直しが講じられました。

  • 判定期間(2課税年度前)の売上高が5千万円以下で、かつ、税務調査などの際、税務職員等からの求めに応じて電子取引データの出力書面の提出・ダウンロードに応じることができる場合

     →検索要件(上記のファイル名の変更や任意のフォルダへの格納)は不要
  • 「相当の理由がある」と税務署長が認める場合で、かつ、税務調査などの際、税務職員等からの求めに応じて電子取引データの出力書面の提出・ダウンロードに応じることができる場合

     →すべての措置は不要

なお、これらの場合でも、
データの保存自体は必要です。

また、「相当の理由」がどのようなものであるか、
現在のところでははっきりしたことはわかっていません。

電子取引データの保管は、
インボイス制度と同様に事前の準備をしておく必要があります。

また、実際の運用にあたっては、
その他の詳細な要件もありますので、
詳しいことやご不明な点は
最寄りの税理士等へ相談されることをおすすめいたします。

(桐生税理士会 税務研究部会 内田伸)